40m QRP AM ハンディトランシーバー(Micro40AM2014)について
ブログ管理人のJR8DAG/M.Kannoです。
ハムフェア2014自作品コンテストにて自由部門優秀賞第3席と
なった40m QRP AM ハンディトランシーバー(Micro40AM2014)に
ついて、自作品コンテストの提出書類で書かなかったことに
ついて述べます。
【出品の動機】
・今回は、ハムフェアのブース出展をしているときに自作品コンテストに
入賞したいというのが最大の動機でした。
・他、昨年は少し中途半端な作品を出品してしまったこともあり、今年は
もう少し自分で納得できる作品を出品したうえで評価を受けてみたいと
いうこともありました。
【どのような作品を出品するか】
・この辺りは運用し続けてきた人たちに感謝しなければいけないと思って
いますが、ある程度話題になっている7MHz AMトランシーバーを出品する
ことは、昨年の自作品コンテストの段階で決めていたと思います。
・7MHz AMトランシーバーを出品する場合、現在の管理人の技術力では
JR8DAG-2006AMやJR8DAG-2010AMのような標準機か、
Micro6AM2002のようなハンディ機のどちらかになるだろうと思いました。
・ここ数年の入賞作品を見ていると、出品者が培ってきたこだわりに
加えて作品としての独創性を見せることが必要と感じていました。
このこだわりは標準機よりもハンディ機の方が印象を与えやすいと
判断しました。7MHz AMのハンディトランシーバーは周波数固定の
ものはありましたが、本作品のような周波数可変機は見つから
なかったことも出品の決め手となりました。
【回路設計・製作】
・本作品の回路のベースになっているのはTaru6AM2009
2003年の6m AMハンディ機(Micro6AM2002)は受信の低周波
電力増幅回路と送信の変調回路を共用にした影響からか
変調が今一つであったので、今回は送受別々に動かしている
Taru6AM2009をベースとした。
・Taru6AM2009の基板(7cm×6cm)はMicro6AM2002(8cm×6cm)より
小さいので、基板のパターンの再設計は必要ないと思っていたら、
なんと受信部はバリコンの位置が逆であることが判明し、その辺の
修正を行うこととなった(送信部はそのまま利用可能だった)。
・パターン修正の処理方法は、Taru6AM2009のパターンを左右反転
したあと、左右反転ではピン配置がずれるLM386Nの周辺回路を
を修正している。送信部はTaru6AM2009のものがそのまま使えた。
・今回、配線がしやすくなることを考えてピンヘッダを導入したが、
今まで使ってきた基板パターンはピンヘッダの利用を想定しな
かったため、ピンヘッダが使えない場所があった。今後のパターン
設計で考慮しないといけないかなと思っている。
・Micro6AM2002では外部マイクを使えるようにしていたが、使用頻度が
極めて少なかったので、本作品では削除して、そのスペースに
アッテネータを入れることとした。
・アッテネーターはボリュームを使用した可変式の方が良かったのだが、
本作品ではスイッチで切り替える固定式とした。減衰量は-15dBだが、
もう少しあった方が良いようで、この辺の調整は必要と思っている。
・水晶は市販の汎用品が使える組み合わせをいろいろ考えたところ、
19.2MHzと12MHzを利用するのが良いだろうと判断した。VXOの19MHz台は
これまで製作してきたVXOの周波数と大きく変わらないので、周波数可変の
調整にさほど苦労しないとの目論見もあった。
・送信出力は7MHzだとJARLアワードのQRPp特記が取得できる最大出力の
0.5Wにしたかったが、変調に使用している低周波トランス(ST-83)の最大
定格(0.2W)が送信出力を0.2Wにする大きな理由となった。50MHzと違って
0.2Wは交信に大変苦労する出力であるとは思ったが、本作品では交信
実績よりも7MHz AMトランシーバーをハンディ機サイズにした独自性を
前面に出すこととした。
・検波ダイオードは当初秋月電子で販売されているBAT43を
使用したが、感度が30dB以上低下し、まったく使えない
受信機となってしまった。これまで多用してきた1SS106を引き続き
採用することとなった。規格表を見ると、BAT43は低電流時の
順電圧特性が異なっており、検波には不向きであることが読み
取れるのだが、実際に使ってみて違いが体感できたのであった。
・スプリアスを抑えるフィルターはπ型2段LPFにもしてみたが、
第2次高調波のスプリアスが-35dB程度となったため、多少の
インピーダンスなどの暴れがあるものの、これまで使っていた
T型同調フィルターを採用したが、QL=5では約-40dBであった。
-50dB程度に抑えるにはQL=10が必要だったが、T37-2コアに
0.29mm線材では、コイルの最大巻き数を超えていたため、コイルの
最大巻き数で計算したところQL=7となり、第2次高調波の
スプリアスは約-45dBとなったが、本作品では十分と考えることと
した。そのほか、T型同調フィルターにπ型LPFの追加も考えたが
スペースがなく断念した。
・ケースはMicro6AM2002で使っていた鈴蘭堂のLUB-1が現在は入手でき
ないため、同じ大きさのケースをアルミ板から作成した。ケースの
自作は1999年製作のMicro10AM以来であった。ケースの自作というと
格好良さげだが、精度とかを考えると市販のものがあれば、そちらを
使いたいなというのが感想であった。
・後日のメンテナンスを考え、内部にアクセスできる構造を採用したのは
これまでの作品と同様であるが、今回はケースの外枠をもう少しはずし
やすくする工夫を行った(スピーカ、マイク、PTTスイッチ)。特に、
送受切換のプッシュスイッチは従来は外枠ケースに取り付けていた
ものを本作品では内枠のケースに取り付けている。
【デザイン】
・AM系の無線機は水色系で塗装しているので、本作品も外側は水色、
パネルは黒で塗装した。パネル文字はレタリングは入手製や文字の
種類の少なさに難があるので、ネームランドテープを使用した。また、
背面にプレートを張ったが、もう少し目立つデザインでも良かったのでは
と思っている。
【使用感】
・受信感度は十分であるが、夜間は周辺の大電力放送による混変調らしい
妨害が発生し、本作品の15dBのアッテネーターでは対処しきれないことも
ある状況。ただ、JR8DAG-40AM2013のような455kHzセラミックフィルター
使用の受信機よりは明らかに良く、現時点ではこれで十分であると思う。
・送信出力の200mWはかなりきつく、7,8エリアは交信できそうだが、
運用局がいない、1エリアは聞こえても周辺の妨害で交信できないという
感じで、50MHzなら10mWくらいなのではという体感である。
【感想など】
・今回は狙い通りに入賞ができたのはうれしいことでした。
・2003年に出品したMicro6AM2002から周波数を変えただけと思われると
選外もありえると思いましたが、そういう判断はされなかったようです。
・今回の入賞の決め手の1つに7MHz AMが注目されているという
ことがあったとすれば、冒頭にも述べましたが、7MHz AMを運用して
道を切り開いていただいた方々には感謝しなければいけないと
思っています。
(関連記事リンク)
・ハムフェア2014自作品コンテスト入賞作品がJARL WEBで発表される: JR8DAGのメモ書きブログ
・ハムフェア2014自作品コンテスト結果: JR8DAGのメモ書きブログ
・40m QRP AM ハンディトランシーバー(Micro40AM2014)のページを公開(2014.07.22): JR8DAGのメモ書きブログ
・ハムフェア2014自作品コンテストの募集要項発表される: JR8DAGのメモ書きブログ
JR8DAG/菅野 正人
| 固定リンク
コメント