新スプリアス基準によって自作機でアマチュア無線の運用ができなくなるのか?についての考察(2016.07.31)
ブログ管理人のJR8DAG/菅野 正人です。
どうも、平成19年に改正された(らしい)新スプリアス基準によって、アマチュア無線において自作機での運用はできなくなるという方が少なからずおられるようですので、少し考察してみました。
さて、まず一定の基準を満たした無線設備でないと運用してはいけませんということは電波法で定められています。
平成19年、無線設備に適合する基準(スプリアス特性)が変わり、その新しい基準(新スプリアス基準とします)を満たした設備でないと運用してはいけないこととなりました。ただ、平成19年以前に製造された無線設備は新スプリアス基準に適合しているかどうかわからないので、使用可能期間について経過措置が設けられ、その期限が平成29年なり平成34年であったりするということです。
日本の電波法では、平成19年以前の旧スプリアス基準が適用されていた時期であっても、旧スプリアス基準を満たせない無線設備で運用してはいけなかったはずで、運用してよいと認められるためには、以下の手続きが必要だったはずです。
(1)行政官庁の検査を受ける(200W超の無線機はそのはず)
(2)200W以下の無線設備は保証認定でOK(基本書類だけ)
(3)技術適合証明を受けた無線機であれば、さらに手続きを簡略化できる
上記のいずれかで免許を受けたはずです。出力が大きい無線設備は厳格に審査し、無線設備の内容に応じて社会的に影響のない範囲で、かつアマチュア無線の振興なども考えて、制度の簡略化を行っているという流れになるかと思います。
ここで、平成19年度からは、(経過措置を除き)新しいスプリアス基準を満たした無線機でないと運用することはできないということになったはずです。問題は新スプリアス基準を満たす無線設備であることをどのように認めるかです。
新スプリアス基準を満たした無線設備であることを証明し、免許を受けるための続きは以下の通りと考えられます。
(1)行政官庁の検査を受ける
(2)200W以下の無線機については保証認定を受けることが可能(基本的に書類のみ)
(3)技術適合証明を受けた無線機ならさらに手続きを簡略化できる
さて、ここで焦点になるのは(2)の保証認定制度です。平成19年度以降製造の無線設備については新しいスプリアス基準に適合しなければ運用してはいけませんので、平成19年にスプリアスの基準が変わったのであれば、平成19年までに保証認定制度について変更が必要がどうか判断しなければなりません。
で、この保証認定制度が平成19年を境に大きく変わったのかというと、実はここ2,3年の間に何回か保証認定の手続きをしているのですが、送信機系統図の書類審査で少しばかり聞かれることが増えたようですが、基本的に書類だけで審査が通るようです。自作機では明確な製造年月日などはわからないのですから、平成19年以降の保証認定を通して免許を受けた無線設備は、すなわち新スプリアス基準に適合した無線設備と言うことになります。
平成29年や平成34年は、あくまでも新スプリアス基準に適合しているかを確認できない無線設備の使用に関する経過措置が終了するだけで、それをもって保証認定の制度が変わる理由になるとは考えられません(平成19年までに保証認定制度を変更するかどうかを検討する必要があったということ)。
ちなみに、現在は何が議論になっているかというと、旧スプリアス基準の技術適合証明を受けた無線機やJARL登録機種など製造年が明確になっていて、かつ、新スプリアス基準に適合しているかどうかのお墨付きを与えられない無線設備を、どのように取り扱うかを検討しているのだと思われます。
これらの微妙な無線設備も、基本的に保証認定を通してしまえば製造年は不明(保証認定の申請日?)なので新スプリアス基準に適合した無線設備として免許が下りるわけですが、JARDは少しでも手続きを簡略化(系統図などを書くのも省略)したいので、そのあたりを何とかしたいと考えていると推察されます。
少なくとも、保証認定機関として参入したJARDとしては保証認定制度は貴重な収入源と思われますから、できる限り手続きは簡略化したいという思惑があると想像されます。
(今回の考察の要点)
・保証認定制度が現在の状態で存続している間は自作機でアマチュア無線の運用を行うことができると考えられる。
・平成19年以降に保証認定制度で免許を受けた自作機は新スプリアス基準を満たしたものとみなされるはずである。
・保証認定制度の変更は平成19年に行うべきものであり、平成29年に変更する正当な理由はない。従って、保証認定制度の手続きは従来どおり変わらないと思われる。
・出力1W程度の自作機ならば、送信機系統図などの書類を適切に書いておけば、実測データなどを要求されることはないと思われる。ただし、20年以上前の無線機の名称を書類に書いたりすると、製造年が明確になってしまうので、そういう無線機で保証認定を受けようとすると実測データを求められる可能性はある。
(それでも気になる方へ)
総務省、JARL、JARDなどに話を聞くなら以下のように聞いたら良いかと思います。
(1)平成19年以降の保証認定によって免許を受けた無線設備は新スプリアス基準を満たしていると考えて良いのか?
(2)平成19年に保証認定制度について検討を行ったと思うが、手続きに変わった点があるのか?
(3)平成29年は経過措置が終了するだけなので保証認定制度を変更する必要は無いと思うが、その認識で良いのか?
(4)それでもなお、現時点で保証認定制度の手続き方法を変えるとすれば、その根拠はどのようなものなのか?
(参考リンク)
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コメント
8月19日、本日、JARD(日本アマチュア無線振興会)のホームページで、新スプリアス規格対応についての発表があるそうです。発表時間は未定だそうです。
投稿: JR9PRA輪島市のToshi加藤 | 2016年8月19日 (金) 10時02分
JR9PRA 加藤さん、こんばんは
管理人のJR8DAG/M.Kannoです。情報提供ありがとう
ございます。
どうやら平成19年以前に製造していることがはっきり
している無線機をできる限り簡単に継続して使用できる
ようにするための制度かなと思います。
確認保証の対象機種にミズホ通信のピコ6AMが入って
いたのには一番驚きました。
JR8DAG/菅野 正人
投稿: JR8DAG/M.Kanno | 2016年8月24日 (水) 22時59分