空き缶を利用した6m QRP AMトランシーバー(CanTra6AM2017)について(2017.08.27)
ブログ管理人のJR8DAG/M.Kannoです。
ハムフェア2017自作品コンテストにて自由部門優秀賞第2席に入賞できた「空き缶を利用した6m QRP AMトランシーバー(CanTra6AM2017)」について、自作品コンテストの提出書類で書かなかったことについて述べます。
【出品の動機】
・コカコーラの缶ラジオのような円筒形のトランシーバーはの製作例は皆無に近いことから、見た目にも独自性を打ち出せるだろうという考えもあり、数年前から製作することは考えていました。
・ハムフェア自作品コンテスト入賞作品には、円筒形状のトランシーバーがほとんど見られなかったことから、出品して評価を受けてみたい、出来るならば入賞させたいとも考えていました。
【どのような作品とするか】
・本作品のようなトランシーバーとしての使い勝手よりも遊び的要素の強い作品がもっとふさわしい周波数と電波型式は、やはり50MHz AM(6mAM)であると考えました。DSB(抑圧搬送波両側波帯)はAMよりも製作が楽でしたが、それでは面白みはないと判断しました。
・単に缶型の6mAMトランシーバーを製作するだけでは、作品として主張が十分でないと判断し、Es伝搬で交信できる実用性を確保することを考えました。
・これまでと同様にデザインはできる限り丁寧に仕上げる、回路設計は必要な性能の確保と製作後のメンテナンスをしやすくすることなどにこだわりました。
【空き缶の選定】
本作品の空き缶の選定にあたっては以下の点を考慮しました。
・片手で楽に持てる大きさであること
・片手で普通にもって缶がつぶれない程度の強度がある
こと(基本的にスチール缶)
食料品店、雑貨店、ホームセンター、無印良品、100円ショップ等、
いろいろと巡って調査した結果、ハインツ日本(株)が販売しているホワイトソースのスチール缶(290g)を採用しました。
缶の厚さそのものは、さほど厚くない(0.5mm程度?)ではあるのですが、スチール製と言うこともあり、過剰な力を
加えない限り変形するということはありませんでした。
このハインツの缶はほぼ完全な寸胴であり、スペースを有効に活用できることも採用のポイントとなりました。同じ
ような大きさのカゴメのナポリタンソーズの缶などは上部の直径が小さくなっていることもあって採用しませんでした。
【回路設計・製作】
・6mAMにおいて、Es伝搬等で他エリアと交信を行うためには、周波数可変トランシーブ操作と出力は0.1W以上が必要であると判断。その条件を満たしながら、空き缶の狭いスペースに収めるための回路構成を検討した結果、回路はハムフェア2007自作品コンテストに出品したPocket6AMをベースにすることとした。
・本作品では、Pocket6AMから受信部は受信周波数以外の強信号の抑圧の軽減するための455kHzフィルターの変更、スピーカを鳴らすための低周波電力増幅回路を追加、送信部は出力を100mWに増やすための電力増幅回路追加している。
・電池交換のしやすさなどの使い勝手や後日のメンテナンスを考え、内部にアクセスしやすい構造を採用したのは、これまでの作品と同様である。
・回路の基板は缶に収められる大きさとして5.6cm×8.0cmとなった。チップ部品なども活用することで、どうにかパターンを設計することができた。
・送受切換はパネル表面にトグルスイッチを配置するのが楽ではあったが、缶を手に持ってPTTボタンを押す配置にこだわった。PTTスイッチは2回路2接点のプッシュスイッチを使用したが、このスイッチの取り付け方法を工夫することで対応した。スイッチは、見た目の良さとPTTを押しやすくするためにスイッチキャップにボタンを取り付けている。
・周波数可変トランシーブ操作を実現する方法は、Pocket6AMですでに実現している送受周波数を455kHz差で同期する手法を採用した。Pocket6AMに比べて可変幅を20kHzほど拡張したが問題はなかった。
・電池は当初は缶の下部に収めることを考えていたが、それでは搭載できる基板が小さくなることがわかったため、いろいろと考えた結果、基板の裏側に電池と共にマイクとスピーカーを配置するのがスペースをもっとも有効に使えることがわかった。
・本作品では、空き缶にトランシーバーを収めることを重視したこともあり、回路は新鮮みは少ないが実績のある回路で構成したものの、特に受信音量が不足するなど回路を安定して動作させるまでにかなり難儀した。特にTA7368Pの使い方を間違っているのに気がつくのに時間がかかってしまったのは予想外であった。
・パネルは1mm厚のアルミ板の上に0.5mmプラバンを黒に塗装したものを重ねている。アルミ板、プラバン共に、手作業で円形に切りぬいている。
【デザイン】
・AM系の無線機は水色系で塗装しているので、当初は缶を水色、パネルを黒に塗装することを考えていたが、缶が水色では見栄えに欠けると判断したこともあり、Pocket6AMの時と同じく、缶を赤、パネルを黒で塗装することとした。モデルとなったコカコーラ缶ラジオのイメージに合わせることと、サッカーJリーグチームの北海道コンサドーレ札幌のチームカラーの赤黒に合わせる意図もあった。
・パネルは0.5mmの透明プラスチック板を黒に塗装した後に、インクジェットプリンタ用のシール用紙に印刷した文字を貼り付けている。この方法は色とフォントを自由に使える点が利点である。
・PTTスイッチキャップは黒、パネルを開ける手回しネジは赤に塗装し、それそれ色が互い違いなるようにしている。手回しネジは当初は黒にするつもりであったが、LENOVO社のThinPadシリーズのトラックポイントのイメージに合わせて赤に変更した。
・今回は、デザインの独自性を前面に出す形となったが、QRL第277回放送において、その点に関して言及していただき、感謝している。
【使用感】
・受信感度はJR8DAG-2006AMやMicro6AM2002に比べると正直物足りないのですが、Es交信においても不自由するほどの感度の低さではないと思います。それよりも問題なのは、強信号による抑圧に弱いことです。Pocket6AMよりは良いのですが、JR8DAG-2006AMやMicro6AM2002より明らかに劣り、Es伝搬を利用した交信は数局程度は可能ですが、10局以上と交信しようとすると途中で抑圧を受けてしまい、安定して交信することが出来ない状況です。
・送信の音質は、JR8DAG-2006AMより少し落ちるものの、Es交信においても特に問題にならないレベルでした。
・自作品コンテスト出品時までに、1,2,4,5,8,9エリアの40局(重複を含む)と交信できました。ありがとうございました。
(参考:本作品での交信局、重複なしで19局)
・JE1LCK,JK1GKG,JA2OPP,JE4URN,JA5GYU,JH5BKZ,
JA8CXX,JA8OUZ,JA8TDL,JA8TSG,JA8XTG,JE8CRA,
JE8DBM,JH8BMS,JH8HQA,JI8DXK,JK8SZF,JR8PWJ,
JR9RKU
【その他】
・今回の作品においては、エコとかリサイクルということに関しては一切書類には書きませんでした。本作品を製作した意図は、あくまでも楽しむためのものと言うことでしたので・・・。ただ、審査側がそのように考えるのは別に構わないことであるとも思っています。
【感想など】
・今回は、入賞をめざして作品を出品し、想定したとおりに入賞できたという点で、管理人としては納得できる結果であったし、いろいろと楽しめて良かったと思っています。
(関連記事リンク)
・ハムフェア2017自作品コンテスト入賞作品がJARL WEBで発表される: JR8DAGのメモ書きブログ
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