新RS-501の製作記事について(電子工作マガジン2018夏号他)
ブログ管理人のJR8DAG/M.Kannoです。
約40年前、JH1FCZ 大久保さんが発表された6mAM送信機「RS-501」の復刻版の製作記事が以下のとおり電子工作マガジンとアマチュア無線開局・運用マニュアルに掲載されていました。両記事はほぼ同じ内容でありましたが、記事を読ませていただいたところ、いくつか気になる点が見受けられましたので、ブログの記事にすることとしました。
(掲載記事)
・6mAM送信機「新RS-501」の製作,電子工作マガジン2018年夏号(p.66-74),岡崎慎太郎
・6mAM送信機「新RS-501」の製作,アマチュア無線開局・運用マニュアル(p.110-118),岡崎慎太郎
(評価の考え方)
電波新聞社が発売するこの雑誌はどちらも、記事に掲載された作品を真似て製作してくださいという考え方で編集しているものと管理人は判断しています。従って、記事に対する評価は厳しいものとなります。
(記事に対する総論)
・作品そのものの完成度が低い、記事にいくつか間違いが
見受けられることから、この記事の新RS-501をそのまま
製作することは薦められない。
・この記事の執筆者および編集者は、JH1FCZ局が製作した
オリジナルのRS-501の製作の考え方、製作時の時代背景
などをほとんど調べていないような気がします。
・あと、オリジナルRS-501の記事を書かれたJH1FCZ 大久保
さんは存命のはずですが、話を聞きに行くとか、記事の監修を
お願いされたのでしょうか。
・あと、執筆者の能力が低かったとしても、編集者が修正する
ことも可能であったはずですが、そういう編集者はおられ
なかったのでしょうか。
(記事の内容についての疑問など)
ページや写真番号は電子工作マガジンの記事です。
・50.600MHzの水晶を使っているのに、116ページでは50.620MHzで
発振していると書いています。第7図は50.602MHzとなっています
が、どれが正しいのでしょうか?
・回路図(図3)と実体配線図(図4)が合っていません。おそらく、
実体配線図どおりに作ると発振回路が動作しないと思います。
この実体配線図はアマチュア無線開局・運用マニュアルに
おいても修正されていません。全体の配線の様子は写真33と
写真44がありますが、小さすぎて確認できません。
・AMZコイルはFCZコイルと同一のような書き方ですが、
コイルの巻き方とかが全く違うコイルですので、
AMZコイル(旧FCZコイル)と言う記述は間違いだと思います。
・3次オーバートーン発振回路と基本波を発振して3てい倍する
回路は全くの別物です。RS-501の発振回路は3次オーバートン
発振回路であって、基本波を発振する回路ではないです。
(参考1)3次オーバートーン回路を使用したスプリアス特性(JR8DAG-6AM)
(参考2)基本波を発振して3てい倍した回路を使用したスプリアス特性(Pocket6AM)
・送信機のスプリアス特性を確保するために、BPFを製作した
ようですが、第11図によると挿入損失が6dBほどあるそうです。
それが事実だとすると、300mWの送信機の出力は75mWとなり、
225mWが何らかの形で消えることになるのですが、本当に
このBPFを入れたのでしょうか?トロイダルコア活用百科では、
この手のスプリアスを抑えるフィルターとして、π型LPFを
提案していますが、なぜそのπ型LPFを採用しなかったのか、
その記述がないことは問題だろうと思います。
・写真33と写真44を見ると、BPFなしで作品をいったん完成させた
のち、高周波回路関係のラグ板を移動させて後付けでBPFを
入れているようです。なぜ、最初からBPFを入れた状態と
しなかったのか、回路図もBPFを含めたものとしなかった
のでしょうか?
・あと、BPFの周波数特性は掲載されていますが、最終的にBPFを
取り付けた完成状態でのスプリアス特性が全く掲載されていないのは
なぜでしょうか?掲載していなければ、作品が完成していないと
疑われます。
・金属ケースで覆われたAMZコイルに変更したにもかかわらず、
シールド板を取り付けているようです(第20図)。オリジナルの
RS-501はなぜシールド板が必要であったか理解できていないと
思われても仕方ないと思われますが、いかがでしょうか?
・LM380Nの入力にあるのST-12は現在のコンデンサマイク(ECM)
ならおそらく不要です。当時は低感度のダイナミックマイクしか
なかったので、インピーダンスを合わせる意味合いはあったかと
思いますが、現在よく使われているコンデンサマイクなら
直接入力しても十分な変調がかかると思います。なお、第2表に
ST-12の参考価格が書いていますが、720円もするのですから
削減できるものなら削減した方が良いかと思います。
・というか、LM380Nよりもピン数の少ないLM386Nを使った方が
良いように思います。
・パスコンがオリジナルと同じ0.02μF。間違ってはいないけど
今なら0.01μFの方が良いのでは?
こうやって記事を見ていくと、執筆者や編集者はオリジナルの
RS-501を全く理解していない(下手をすると全く理解しようとして
いない)ように見えます。
あと、電子工作マガジンという雑誌の性格から読者が求めている
のは、作品を真似て作ることができる完成度の高さであろうと考え
ます。この記事を見ていると読者にとっては邪魔者になりえる試行
錯誤段階の記事が掲載されているのに加えて、完成状態の写真や
測定結果が掲載されておらず、このような記事を掲載している
電子工作マガジンの編集者の能力は大丈夫なの?と思ったのが
正直な感想でした。
今後は、記事に掲載する作品はきちんと完成させて実際に使える
状態になったものとする、そして作品の測定結果は適切に示すことは
最低限実施し、可能ならば完成した作品は使ってみてどうだったか
についても記述していただきたいと思います。 ブログ管理人:JR8DAG/菅野 正人
← クリックお願いします
にほんブログ村 のランキングに参加しています
| 固定リンク
コメント
今日は。私は移動運用専門なので、全市全郡コンテストには台風の為、参加出来なく成りました。
ところで、編集部に直接伝えられた方が良いのではないでしょうか?
「ラジオの製作」は高校生の頃までは毎月読んでいましたが、電子工作マガジンは一度も買った事が有りません。
「ラジオの製作」が廃刊に成って久しく、編集者のレベルが落ちているのかもしれません。(>_<)
投稿: JH8UUR | 2018年10月 5日 (金) 10時58分
JH8UURさん、おはようございます。
全市全郡コンテストの件は了解です。台風25号の
進路予報を見る限り、道南地方の近くを通ることは
ほぼ間違いないと思いますので、無理をしない方が
懸命と判断します。
電子工作マガジンを発行している電波新聞社の
ホームページには、問い合わせ窓口があり、この記事を
お知らせするということもできます。
ただ、電子工作マガジンの関係者が、自分たちで
探してこの記事を見つけるくらいのことができなけ
れば、雑誌そのものを改善することなど難しいのではと
思います。そして、この記事にたどり付けない程度の
能力しか無いのならば、電子工作マガジンも遠くないうちに
廃刊となるでしょうし、所詮はその程度の雑誌であったと
いうことになるかと思います。
私は、この記事はあくまでも自分のために書きました
が、電子工作マガジンを積極的に維持したいとは思って
いませんので。
よろしくお願いします。
JR8DAG/菅野 正人
投稿: JR8DAG/M.Kanno | 2018年10月 6日 (土) 08時35分