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2022年9月30日 (金)

新スプリアス基準によって自作機でアマチュア無線の運用ができなくなるのか?についての考察(2022.09.30)

 ブログ管理人のJR8DAG/菅野 正人です。

 2016年7月頃、JARDが旧スプリアス基準で技術適合証明を受けた無線機について、2007年(平成19年)に改正されたスプリアス基準(以降、新スプリアス基準とする)に適合した無線機であるかを確認する作業を行ったことを契機に、新スプリアス基準によってアマチュア無線において自作無線機での運用はできなくなるという根拠のない憶測が出てきたように思います。
 その際に、管理人なりに考察したことを2016年7月31日のブログの記事として投稿しましたが、それから約6年たちしましたので、その後の経過を踏まえて新たに自作無線機にてアマチュア無線の運用ができるのかについて考察したいと思います。

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 まず、一定の基準を満たした無線設備でないと運用してはいけませんということは電波法で定められています。これは、旧スプリアス基準であっても新スプリアス基準であっても変わりはなく、アマチュア無線局いおいて自分が使用する無線設備で運用してよいと認められる(許可を得る)ためには、以下の手続きが必要となるはずです。

(1)行政官庁の検査を受ける(200W超の無線機はそのはず)
(2)200W以下の無線設備は保証認定でOK(基本書類だけ)
(3)技術適合証明を受けた無線機であれば、さらに手続きを簡略化できる(基本届け出のみとなる)

 上記のいずれかで免許を受けることになるはずです。出力が大きい無線設備は厳格に審査し、無線設備の内容に応じて社会的に影響のない範囲で、かつアマチュア無線の振興なども考えて、制度の簡略化を行っているという流れになっていると考えます。
 2007年(平成19年)、無線設備に関する基準(必要とするスプリアス特性)が変わり、新スプリアス基準に適合した無線設備でないと運用してはいけないこととなりました。ただ、2007年(平成19年)以前に製造された無線設備は新たに調べない限り新スプリアス基準に適合しているかどうかわからないので、新スプリアス基準に適合していると確認できない無線設備については使用可能期間について経過措置が設けられ、その期限が2017年(平成29年)なり2022年(令和4年)であったりしたということです(注1)。

 特に2017年(平成29年)からは、新しいスプリアス基準を満たした無線設備でないと使用するための免許を受けることはできないということになりましたが、問題は新スプリアス基準を満たす無線設備であることをどのように認めるかですが、スプリアス基準が新しくなっても、アマチュア無線局において免許を受けるための大まかな手続きの流れは旧スプリアス基準と変わりはなく以下の通りと考えられます。

(1)行政官庁の検査を受ける
(2)200W以下の無線機については保証認定を受けることができる
(3)技術適合証明を受けた無線機ならさらに手続きを簡略化できる

 ただ、大まかな手続きの流れは同じとして、上記の(1)~(3)の具体的な内容(許可する基準など)に関しては、新スプリアス基準に適合したものにする必要があります。(3)については新スプリアス基準に適合した無線設備かどうかを調べる方法が確立されています(技術適合証明を行うための基準を変更したはず)。(1)は管理人は今ひとつわかっていませんが、個人的には今のところは関係が薄いのでここでは議論しないこととします。
 さて、ここで自作無線機で運用する際に焦点になるのは(2)の保証認定制度ということになります。2007年(平成19年)度以降製造の無線設備については(例外を除いて)新しいスプリアス基準に適合しなければ運用してはいけないことになりましたので、2007年(平成19年)にスプリアス基準が変わったのであれば、2007年(平成19年)までに保証認定制度について変更が必要がどうか判断しなければなりません
 では、この保証認定制度が2007年(平成19年)を境に大きく変わったのかというと、2007~2022年現在までの間に何回か保証認定の手続きをしていますが、提出する送信機系統図で少しばかり書くことが増えましたが、基本的に提出した書類(申請書+送信機系統図)だけで審査が通っています(注2)。自作無線機では明確な製造年月日などは見た目だけではわからないですから、2007年(平成19年)以降の保証認定を通して免許を受けた無線設備は、すなわち新スプリアス基準に適合した無線設備と言うことになりますし、実際に北海道総合通信局に確認したところ新スプリアス基準に適合した無線設備として免許されていました(注3)。

 ちなみに、2017年(平成29年)頃にやっていたことは、旧スプリアス基準の技術適合証明を受けた無線機やJARL登録機種など製造年が明確になっていて、かつ、新スプリアス基準に適合しているかどうかのお墨付きを与えられない無線設備を、どのように取り扱うかを検討していたのだと思われます。特に旧スプリアス基準で技術適合証明を受けた無線機については、JARDは少しでも手続きを簡略化(系統図などを書くのも省略)して収益を上げるために、1機種あたり2台以上のサンプル計測で新スプリアス基準に適合しているかを確認し、適合したものについて保証認定することにしたと考えられます。技術適合証明を得ていない自作無線機などは2007年(平成19年)までに保証認定制度について変更が必要がどうか判断しなければならかったのですが、(経緯はどうあれ)2007年時点での保証認定制度はほぼ変更されなかったのですから、旧スプリアス基準の時と同じ対応にせざるを得なかったものと判断されます。このあたりは、2014年に保証認定機関として再参入したJARDとしては保証認定制度は貴重な収入源と思われますから、このあたりは余計なことはしない方が良いとの判断もあったと推察されます。

 以上を踏まえて、新スプリアス基準によって自作機でアマチュア無線の運用ができるかどうかについての考察の要点は以下のとおりとなります。

◎考察の要点(2022.09.30現在)
保証認定制度が現在の状態で存続している間は、自作機でアマチュア無線の運用を行うことができると考えられる。
保証認定制度の変更は2007年(平成19年)までに行うべきものであり、その時点で大きな変更がなかった以上、保証認定の手続きは旧スプリアス基準時代と大きく変わらないと思われる。
・出力1W程度の自作無線機ならば、送信機系統図などの書類を適切に書いておけば、実測データなどを要求されることはないと思われる。ただし、20年以上前の無線機の名称を書類に書いたりすると、製造年が明確になってしまうので、そういう無線機で保証認定を受けようとすると実測データを求められる可能性はある。

(参考記事リンク)
新スプリアス基準によって自作機でアマチュア無線の運用ができなくなるのか?についての考察(2016.07.31): JR8DAGのメモ書きブログ
【アマチュア無線】自作機のJARD基本保証認定手続きについて(2022.09.15): JR8DAGのメモ書きブログ
自作機のJARD基本保証認定手続きについて(2020.03.28): JR8DAGのメモ書きブログ
JARD基本保証を利用した自作機の変更申請(届)について(2019.05.18): JR8DAGのメモ書きブログ
自作機のJARD基本保証認定手続きについて(2019.04.19): JR8DAGのメモ書きブログ
JR8DAG のAM & QRP ホームページ管理人のコメント(2014.10.05): JR8DAGのメモ書きブログ(自作機でアマチュア無線の運用が可能かどうかについてコメントしています)

 JR8DAG/菅野 正人

(2024.09.09 18:00) 記事を追記しました

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(注1)2022年9月現在は、2017年(平成29年)までに旧スプリアス基準で適合を受けた設備の使用期限(経過措置)は当面の間の延長となっていますが、2017年(平成29年)以降は新しく免許を受けようとする無線設備は新スプリアス基準に適合する必要があります。

(注2)(JARDの基本保証手続きに提出する送信機系統図作成の留意事項)
 これまでの0.5Wまでの自作無線機に関して、JARD基本保証(保証認定)の手続きにあたって提出する送信機系統図作成の留意事項は以下のとおり(下の図はJR8DAG-6AM2020Wの保証認定手続きに提出した送信機系統図)
新スプリアス基準に対応して設計・製作しているという文言を記載(参考:https://jard.or.jp/warranty/kihondata/guidance_01.pdf の7ページ目)。
②製作年月日は2017年(平成29年)以降は不要になったと思うが、念のために記載している(書くことで不利なことはない)。
発振についてはソースと周波数を書く(20.0MHzの水晶使用など)。送信周波数がアマチュアバンドの範囲内になっているかの判断に必要というJARDの説明である(参考:https://jard.or.jp/licenseqa/index.html#kihon Q1-9. 自作した送信機で申請する場合、何を提出すれば良いですか?)。
④旧スプリアス基準時代においても、送信周波数がアマチュアバンドの範囲内になっているかを確認しているようなので、送信周波数の範囲が分かるように各発振回路の周波数範囲を記載している。
⑤2022年9月現在までの手続きにおいて提出したものは送信機系統図のみで、スペクトラムアナライザの計測結果などは提出していない。

Dag6am2020w01a
JR8DAG-6AM2020Wの送信機系統図(青字は留意事項として追記したもの)

(注3)2022年現在、新スプリアス基準に適合した無線設備であるかどうかは免許状に記載されていないため、管轄の総合通信局で問い合わせないと確認することができない

Am_qrp_dag400_400_20191127020201

 (2024.09.09 18:00追記)
 2024年6月4日(火)、一般社団法人日本アマチュア無線連盟(JARL)、一般財団法人日本アマチュア無線振興協会(JARD)、日本アマチュア無線機器工業会(JAIA)、CQ出版株式会社の4者にて構成された会議体である「アマチュア無線継続的発展会議(SD会議)」が以下の第1次報告書をとりまとめ公表しました。

(「アマチュア無線継続的発展会議(SD会議)」第1次報告書の公表)
https://www.jarl.org/Japanese/4_jarl/4-1_Soshiki/SD_kaigi2.html
(第1次報告書)
https://www.jarl.org/Japanese/4_jarl/4-1_Soshiki/SD_kaigi/SD_Houkoku1.pdf

 この第1次報告書の9ページに自作機での保証認定に関わりそうな以下の記述があります。

2.2.6 アマチュア無線の効果的活用・適正運用の改善
(3)無線機自作のハードルを下げるための改善
 ① 自作無線機の増設時に必要となる変更保証の簡易化について検討する。

 この報告書がどの程度の効力があるのかかも不明ですが、少なくともJARDも構成員となっているSD会議の報告書に書かれている内容を信じる限りにおいては、申請する自作機の仕様にもよりまずが、(保証認定料が高額ではあっても)自作機で保証認定を受けることが今後もできるようには思えます

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